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薬学部コラム

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第48回

分厚い本とその内容

薬剤学研究室 髙橋 稔 助教


ドストエフスキーの『罪と罰』
ゲーテの『ファウスト』
プルーストの『失われた時を求めて』


 読書にあまり馴染みのない方でも、タイトルは聞いたことがあるといった人が多いのではないでしょうか。上記の書物は一般的には名著として知られているばかりではなく、その本の厚さにおいても有名であります。どうしても本の厚さに目が行ってしまい、手をつけられずにいるという方もひょっとしたらおられるのではないかと思います。お恥ずかしながら私はまさにその一人でして、読破したことはありません。どのような本であるか簡単に調べてみたところ、例えば『失われた時を求めて』についてですが、登場人物は約2000人存在して、さらに総ページ数は5000ページ強もある作品であり、そのため読破に要する時間は一般的には数々月はかかるようです。タイトルからしてすでに難しそうな雰囲気が漂っているこれらの本が、読み始める前からこれでは聞いただけで頭がくらくらしてしまいます。そもそもそれ以前に、タイトルを聞いただけではどんなジャンルの本かもよく分かりません。 
 読破したことがないことは前述の通りなのですが、実は内容に関してはかじった程度には心得ております。内容を知るきっかけになったのは、私がまだ大学生だった時分に、本屋でたまたま目に留まった本(残念ながら書名は失念してしまいましたが)でした。なんとなしにパラパラと眺めていると、上記の重厚な名著がわずか100文字足らずで要約されており、あまりのあっけなさに思わず笑ってしまったことをよく覚えております。読書本来の楽しみ方からはかけ離れていると思いますが、少なくとも内容や概略の理解が出来たという点で非常に印象強く残っています。

 私はもともと薬局の薬剤師として日常的にお薬の説明をする仕事に携わっておりましたが、そもそも職に就くまでには薬学部で膨大な量の教科書や専門書、そして問題集など多くの分厚い本に触れる機会がありました。もちろん職に就いてからも様々な本に目を通す必要があります。実際にお薬の説明にあたっては、その数多くもの本の内容から要点を抽出して、さらに簡潔にまとめて伝達する必要があります。あまりに専門的な用語が多すぎたり、必要以上に説明が長すぎたりするのは、前述の「厚い本」のように避けられてしまう恐れがあり、「読まない」ことになりかねません。そうならないためにも、私が学生時代に出会った本のように難しそうな内容を簡潔に要約するということが、説明している人に少しでも興味を持ってもらうために非常に大事であると私は考えます。
 一例としまして、ドストエフスキーの『罪と罰』を、これから読まれる方もひょっとしたらいらっしゃるかも知れませんので、内容に出来るだけ触れないようにして以下にご紹介したいと思います。

 「ある貧乏学生が心の内に秘める苦悩とは?周囲に揺り動かせられた末に彼が下した決断は!?人気新聞連載小説をついに書籍化した大長編エンターテイメント」

 どうでしょうか?タイトルが難しそうな本でも、これならちょっとは見てみようという気になりませんか?

※本コラムは、書籍の宣伝や批評を目的としたものではありません。

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