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薬学部コラム

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第5回

プールサイドのブラックボックス

医薬品情報学研究室 木下 淳 助教


夏休みに実家に帰省した際に、母校である小学校の前を歩いていると、子供たちの元気な声が聞こえてきました。その日は夏休みのプール教室だったようです。20年ほど前に自分が同じプールではしゃいでいたことを思い出し、「懐かしいなぁ」と感じながら通り過ぎました。

プールサイドのブラックボックス

みなさんのなかで「学校のプールの片隅でプールの水を少しだけ取り、黒い箱に入れ、透かして見ているひとがいた」ということを覚えていらっしゃるひともいるのではないでしょうか。あのひとは一体何をしていたのでしょうか?
正解はプールの水が安全であるかを測っていたのです。あの少しツーンとした匂いのもとである残留塩素などを測っていたのです。
ところで私の場合、そのブラックボックスを持っているひとはよく知っている、というか毎日必ず会うひとでした。
実は、私の父親でした。なぜ父親がいたのでしょうか?
実は私の実家が祖父から続く薬局で、父親が小学校の学校薬剤師を兼任していたのです。薬剤師という職種には、3つの責務が課せられています。「調剤、医薬品の供給、その他薬事衛生」、薬学部に入学した学生さんなら必ず耳にする言葉ですが、「衛生」という面で薬剤師が活躍していることをご存じの方は案外少ないのではないでしょうか。

水質の検査

学校における学校薬剤師の役割は、その学校に通う子供たちが、安全かつ快適に学ぶための環境を維持することです。プールの水質検査のほかに、水道水の水質検査、教室の机の上や黒板が見えやすい明るさになっているか、教室内の空気が快適な環境になっているのか、先生の声が聞こえやすい環境になっているか。さらに給食を安全にいただけるような体制が整えられているか、という点まで学校薬剤師がチェックしているのです。
これらのことは「あたりまえ」といえば「あたりまえ」なのかもしれません。しかし、「あたりまえ」のことを守り続けることは決して容易なことではないと思います。
幼稚園、小学校、中学校、高等学校には、必ず学校薬剤師がいます。多くは地域の薬局で活躍されている薬剤師の方が兼任されています。真夏の暑い中、子供たちがプールで楽しそうに泳いでいる横で、タオルで汗を拭きながら水質の検査を行い、子供たちの笑顔を守る。学校薬剤師ってちょっとカッコよくないですか?

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