姫獨スポーツ

全日本学生柔道優勝大会
第三位入賞記念号
女子柔道部

はじめに

既に本学HP速報版でお知らせしたとおり、6月24日・25日、日本武道館において開催された『全日本学生柔道優勝大会』(全日本学生柔道連盟・毎日新聞社 主催)の女子3人制の部において、本学女子柔道部が全国3位の好成績をおさめました。
    女子柔道部として再スタートからわずか3年にして既に個人戦においては初年度から、団体戦においては2年連続での関西代表としての全国大会出場を果たしている同部の戦績は快挙と呼べるものであり、今や本学学生や関係者の誇りであると言って過言ではありません。今回は、その女子柔道部の戦いぶりを監督・コーチや選手へのインタビューを交えてご報告致します。

全日本学生柔道優勝大会とは

1952年に第1回大会を開催。1965年以降は日本武道館で開催されている伝統のある大会で、女子は1992年に初開催以来、本年度で26回目の開催を数える。毎年、全日本学生柔道連盟と毎日新聞社の共催で開催されています。女子は5人制と3人制の2種目で行われており、これとは別に10月に日本武道館で行われる全日本学生柔道体重別選手権大会(個人戦)、11月に尼崎市記念公園総合体育館行われる全日本学生柔道体重別団体優勝大会と並んで権威ある大会のひとつです。2015年以降に大学へ入学した選手は、文武両道を実践するため、連盟が定めた必修単位取得数を下回った場合、今大会を始めとした連盟主催の大会には出場できない厳しいルールがあるのも特徴です。

激戦の連続だった大会

関西学生柔道優勝大会を準優勝し、昨年に引き続いて関西代表として出場した女子柔道部は、いきなり初戦の一回戦から昨年度インターハイ優勝者を擁する至学館大学(東海代表)と対戦。先鋒戦からチームのエース納庄秋甫さん(法学部3年)が登場しました。「3人制では、初戦が肝心。勝つに越した事はないが、最低でも引き分けることが命題」と考える監督の期待に彼女は充分に応え、4分間をフルに戦い、相手にポイントを与えませんでした。良いリズムに乗りたい中堅戦では大学に入ってから「伸び盛り」と監督が目を細める名田あすかさん(人間社会学群2年)を投入。期待どおり一本背負い投で、大将戦に登場したポイントゲッター山下優光さん(人間社会学群2年)も、監督から「天性のセンスを感じる」と
言われる足を使った大外刈りでそれぞれ一本勝ちを収め、終わってみれば2-0の完勝となりました。

二回戦は山梨大学(関東代表)戦でした。初戦と同じく納庄、名田、山下の3選手で臨んだ結果、3-0のストレートで快勝し、準々決勝へと駒を進めました。

柔道部としても初の準々決勝進出となる次の試合は、後のインタビューで納庄さんが一番印象深かったと語った九州地区チャンピオンの別府大学(九州代表)戦でした。ここまで2-0、3-0と1ポイントも奪われることなく快勝を続けてきた女子柔道部でしたが、この試合では一転、先鋒戦、中堅戦、大将戦が終わった時点で全て引き分けの0-0。お互いに一歩も引かない熱戦となり、代表戦で勝負を決するという白熱した経過となりました。少しも気が抜けない両校の戦いは代表戦でも続きましたが、代表戦に登場した山下さんが終了時間間際に大内刈りを見事に決める活躍で準決勝進出を決めました。尚、山下さんは、今大会の優秀選手賞にも選出されています。

このような激戦の末、ここまで相手に1ポイントも許すことなく勝ち上がってきた本学柔道部は、準決勝で昨年度惜敗を喫した創価大学(東京代表)戦を迎えました。実力では1,2を争う強豪校に対して常深監督は、納庄さんと山下さんを投入。何とかポイントを狙った作戦でしたが、体格差で勝る創価大学の選手からポイントを奪うことが出来ず、両者とも引き分けに終わりました。そして、続く大将戦で雌雄を決することになりました。ここで本学代表として登場したのは、ヒザの負傷で出場できなくなった名田選手に代わった渡邊香菜さん(人間社会学群1年)。入学から間もない彼女に勝敗を託すことになりました。「先輩たちの頑張りを無にすることは出来ない。」という大きな重圧や、大会に初めて登場する緊張にもかかわらず、体格差で大きく差をつけられている相手校エースに対し、渡邊さんは大健闘。堂々、互角に戦いました。しかし、奮戦の甲斐なく、試合終了あと5秒のところで無念の指導を取られての反則負けとなり、本学の3位が確定しました。

ただ、この試合について、常深監督も「現状では叶わない相手に対してベストゲームだった。」と語られたとおり素晴らしいものであっただけでなく、選手達にとって、自身の成長に確かな手応えと大きな自信を得ることができたこと、「次の大会にこそ!」という新たな目標をつかめたこと。また、依然として存在する強豪校の選手たちとの体格差を補うための「技のキレ」や「体力の強化」などの課題を認識出来たこと等、大いに実りのある大会となったようです。

監督・コーチへのインタビュー(常深監督・中農コーチ)

- 女子柔道部として再スタートから3年目で全国大会準決勝進出を果たしました。大変めざましい躍進といえると思いますが、率直なご感想をお願いします。

(中農コーチ)
普段からの学生達の稽古も切磋琢磨して厳しいものを自ら課して行っているので、その積み重ねが結果を導いたと考えています。学生達は稽古が終わっても個人的にトレーニングをしたりして自分から努力しています。本学の柔道部は早朝練習を課してないので、他大学と比べて「体作り」のための時間が足りません。それを補うために、各学生は自分で考えながらトレーニングを積んでいます。毎日の稽古が終わってからでも1時間ぐらいは各自トレーニング行っています。そのような努力の上に今回の結果があると思います。

- 本学柔道部の他大学にはない強みは何だとお考えでしょうか?

(中農コーチ)
まだ部員数が少なく選手層も厚くありませんが、大人数のところに比べて学生一人ひとりに対して目を掛ける時間やコミュニケーションがとれる時間を長くとることが出来るので、学生達と私たちの距離が近いというのが強みであると考えています。例えば、100人以上の大所帯のクラブになってくると到底面倒みることは出来ません。

- 指導者として気を遣っておられる点はどのようなことでしょうか?

(中農コーチ)
学生にとって、高校の時は指導者から与えられたトレーニングを「やらされている」というものが多かったと思います。でも、私たちは学生達がより良い稽古が積めるような環境を作り、いわば「サポート面」に回るように努めています。例えば、私たちが、「あれをやりなさい。これをやりなさい。」と指示を出すのではなく、毎日コミュニケーションをとりながら、本人の希望を入れて稽古の内容を決めたりして、あくまで学生の自主性を重視して稽古の内容を決めていく方針で指導しています。結果的には、それが良かったのかなとも思っているところです。昔と違って、学生達は自分に合ったトレーニングについての知識や方法を色んな所から引っ張って来たり出来ます。それに対して私たちは助言をする。そのような指導法をとっています。

- その他、指導される上でのご苦労されている事も多いと思われますが?

(常深監督)
学生達というより保護者の方々の経済的負担を考えると最善と思える環境作りが必ずしも出来ないことです。例えば、強くするには遠征・合宿が不可欠なんです。この春にも東京と天理で合宿を行っていますが、その往復に夜行バスを利用したり講道館の安い2000円の宿に泊まってというような努力をしています。旅費も安く、宿泊も安価な天理だけにすれば良いと思われるかも知れませんが、全国の頂点を目指す我々にとって、頂点に近いところに居るような大学が集まっている東京へ合宿に行くことは欠かせないことです。関東への遠征時には、講道館を起点にして日本体育大学、帝京科学大学、創価大学あたりへは武者修行に行っています。

- 今年は3位まで躍進しました。来年度からの目標についてお伺いします。

(常深監督)
もちろん優勝です。今回、惜敗しましたが苦しめられた創価大の中心選手が来年卒業しますのでチャンスかなと(笑)。ただ、早稲田大学の壁は厚いです。 それから、現在の3人制から5人制に移行したいと考えています。その前に一度3人制で「てっぺん(優勝)」を取りたいと思っています。富士山でいうと9合目半ぐらいのところまで登って来ていますので(笑)。3人制に出場してしまうと全日本学生柔道体重別団体優勝大会に出場する権利が与えられないんで、その意味でも5人制に移行したいと思っています。

- 5人制に移行していくために必要なポイントは何でしょうか?

(常深監督)
選手層を厚くすることと、重量級の選手の育成です。本学は52kgクラスの選手は充実していますが、70kg以下は1枚しか居ない現状なので。それから5人制を戦えるようにしていくためには部員が必要です。現在、男女併せて36名の部員(うち女子は13名)ですが、これを50名にすること。女子は、少なくとも20名が必要と考えています。男子30名、女子20名の併せて50人体制の柔道部が出来ればと考えています。

- 今回の大会のことについてお話を戻したいのですが、監督が特に作戦として考えておられたのはどのようなことだったのでしょうか?

(常深監督)
一回戦の至学館大学戦。先鋒で出場した選手は、去年の高校チャンピオンでした。彼女は東海大会でも勝ち続けていたので手強い相手と考えていました。その相手として対抗できるのは本学では納庄しかいないと考えました。仮にその前高校チャンピオンが先鋒として出場しなくても1ポイントを確実に挙げることが出来ると考えて起用したんです。 二回戦、三回戦でも同じメンバーで臨めば勝ち抜けると考えていました。納庄の魅力は引き分けたとしても決して負けないところです。団体戦では、 相手から一本取るよりも負けないことが一番大事なんです。その彼女を中心にメンバーを考えました。

- 準決勝では固定だったメンバー名田さんに代えて渡邊さんを起用されましたが?

(常深監督)
実は準々決勝が終わって名田の膝は動かなくなってしまっていたんです。そこで渡邊を起用しました。もしあそこで無理させていたら対戦相手の選手は体重が彼女の2倍もありそうな選手だったので、潰されていたかも知れません(笑)。

- 対戦前、創価大学に対して勝つ自信はいかがでしたか?

(常深監督)
全く勝てるとは思っていませんでした。今年の春の東京遠征の際に創価大学を見ていますが、渡邊が対戦した岩佐遥選手に引き分けられる選手はいないと思っていましたから。また、もう一人の岩佐選手(彼女の妹)も強いので2ポイントを取られることもあり得るので勝てないなと。ところが、先鋒戦・中堅戦を終わったところで0-0の健闘ぶり。本学としては、ベストな結果です。最後に戦った渡邊も残り5秒で反則負け(残念ながら相手のズボンに手が当たってしまったアクシデント)になってしまいましたが大健闘してくれました。

- 監督の目からご覧になって今回出場した各選手の良さは何だとお考えでしょう?

(常深監督)
納庄は、左組みから右技が得意なんです。ですから今のところ組手争いでは負けることがない柔道をします。専門的になりますが、それが特徴的に良いところかなと思います。山下に関しては、刈り足が非常に器用です。大外刈りを掛けようが、大内刈りを掛けようが、天性的なもの(センス)を持っています。 名田は、高校まで全国大会出場というような実績はありません。近畿大会には出場していますが、兵庫県チャンピオンにもなっておらず、大学に入ってから強くなった選手で、今が伸び盛りの時期にあって一戦一戦強くなっている選手です。渡邊に関しては、まだ1年生なので、まだまだこれからと思います。しかし、今回の創価大学戦は良く頑張ったなと思っています。

選手の皆さんへのインタビュー

- 今大会の中で一番印象に残った試合は?

(納庄) 
別府大学との試合です。代表戦にまで縺れ込んだ試合になって、代表で出た山 下優光が勝ったことに自分の中で衝撃を受けたんで。この時、私が対戦した岡田選手は、高校時代に大分代表として出場していた強い選手でした。
(山下)
準決勝の創価大学との試合です。ポイントを取り切れなかったんですが、去年 よりも手応えを感じられた試合だったので。
(伊與久)
初めて登録選手として参加出来たので間近で観戦出来たので全部の試合です。
(下向)
昨年も対戦した創価大学戦です。体格差が大きくて不利な試合だったのに良い 勝負が出来ていたので。次に対戦する時には勝てそうです。
(渡邊)
やはり創価大学戦です。先鋒と中堅の先輩が頑張って繋いで貰ったのに、最後 指導で負けてしまって申し訳ないことをしたなと反省しています。
(名田)
二回戦の山梨大学戦です。先鋒の納庄さんが一本勝ちでポイントを挙げられた後の試合だったので、もし、ここで自分が負けてしまうと大将戦に出る山下さんに負担をかけてしまうと思って絶対に勝とうと思って臨んだ試合でした。

- 今大会を振り返って、良かった点、反省する点は?

(納庄)
私たちの柔道部が他の大学に比べて良かった点は、恵まれない体格差をカバー
できる「技の速さ」だったり、個人の力だけに頼らない「チーム力」や「チームワーク」にあると思います。反省する点は、やはり体格が小さいことによる「力の不足」です。これから出来るなら体を大きくしたり、力をつけて来年優勝できるよう頑張りたいです。
(渡邊)
自分について言えば、私はチームの中では背が高いほうなので、体格の良い相 手と戦う時は、先輩たちより私の役割だと思うので対応できる力をつけたいと思っています。
(名田)
良かった点は一回戦の至学館大学戦から二回戦の山梨大学戦まで何とか自分の役目を果たすことが出来た点です。逆に悪かった点は、逆に三回戦の別府大学戦で大将として試合に出して頂きながら引き分けてしまったことです。
あの試合は自分が勝負を決めたいと臨んだ試合でした。それから姫路獨協大学の柔道部の良い点は、一人ひとりの意識が高いところにあり、部員同士お互いに刺激を与えあって切磋琢磨できる環境にあることだと思います。

- 柔道以外でも結構です。今一番目標としている事は?

(納庄)
来年も3人制で行くなら関西学生を優勝して全国大会では小さいならでも勝ち 残っていけるチームを作っていきたいです。将来、なれるなら柔道の指導者に なりたいと思っています。
(伊與久)
来年は試合に出られるメンバーに入ってチームの一員として頑張りたいです。 全国でも戦える素晴らしいチームだと思うので。
(渡邊)
柔道では、今年メンバーに入って試合が出来たので、来年も強くなってメンバ ーに入って今度は最初から試合に出たいです。私は、まだ1年生で大学に入っ て少しなので勉強のほうもしっかり頑張って勉強も柔道も良い成績を残せるよ うに両立して頑張ります。
(名田)
今回の大会で、ここまでやれることが分かったので、もう少し練習を工夫して頑張れば優勝は取れると思っています。まず、ヒザの怪我を直して、完治まで半年間かかるらしいので、その間に上半身の強化をします。そして、復帰した時に一日でも早く今迄の柔道を取り戻して来年の兵庫県ジュニア体重別柔道大会に臨みたいと思っています。