姫獨スポーツ

勝負にこだわらず堂々と打ち込め
剣道部

本学剣道部の現状と展望

平成12年から16年まで兵庫学生大会で5連覇を果たし、特に平成14年には男女とも全日本学生大会に出場を果たす等、15周年記念館(武道館)竣工当時に、かつては、輝かしい戦績を誇った剣道部。 あれから10数年が経過し、部員数不足から不本意な低迷時代が久しく続いていましたが、昨年の春、袖山智也監督を迎え、個人練習に時間を割き、部員数を増やす等、地道な努力を重ねて復活に向けた努力を着実に積み重ねています。 今回は、その復活途上にある剣道部(袖山監督)を訪ね、クラブの現状や将来への抱負、監督の指導方針について等の貴重なお話しを伺いました。

監督インタビュー(袖山智也 剣道部監督)

- まず、剣道部の現状について、現在の部員数や練習時間からご紹介をお願い致します。

(袖山監督)
現在、全体で男女合せて18名の部員が在籍しています。内訳は、4年生が男子3名、女子1名。3年生が1名。2年生が男子5名、女子2名。1年生が男子4名、女子2名の合計18名です。 この2年間は少し部員が増えましたが、人数的にもまだまだで、理想としては各学年10名ぐらいの部員を集めることが出来ればと考えています。
クラブの活動時間は、全体練習として、日祝日を除いた月曜日から土曜日 までの週5日間、平日は、部員の授業が終了する18:00から、土曜日は10:00から、それぞれ2時間ずつを充てていますが、部員によって授業の空き時間がありますので、全体練習以外の時間も個人練習の時間として道場は開いています。

- 剣道というのは、身長、体重などで階級を分けないスポーツですね。全くの無差別ということですと、体格差で有利不利があるのでは?

(袖山監督)
現役時代、私自身も上背のない選手でしたので確かに「身長の高い選手が羨ましい」と感じたこともありますが、上背のない選手は『銅打ち』や『引き技』などもありますので一概に 体格の大きい者が有利とは言えないと思います。

- 監督の目からご覧になって、現状のチーム内で注目されている選手を何人かご紹介頂けますか?

(袖山監督)
全員が素晴らしい選手達なんですが、強いて挙げるとすれば、男子では1年生の小林大祐(人間社会学群)ですね。彼の魅力は練習に取り組む姿勢です。彼は、県下の強豪校出身 ですが、高校時代、試合には「出られたり、出られなかったりの選手」でした。しかし、大学に入って着実に伸びており、4年生になるまでに相当強くなってくれると期待しています。女子では2年生の野口あゆみ(人間社会学群)ですね。 彼女の良いところは、真面目に剣道に取り組んでいる姿勢に加えて、「強くなるには、どうすれば良いか?」を彼女自身が常に考えているところですね。あの姿勢を貫けば必ず選手として伸びて来ると思います。その他にも「伸び代」のある 有望な選手は沢山います。特に高校時代に成績を残せていない者でも大学に入って実際に大きく伸びた者もいます。私が選手を見る場合、「打ち込み」「打ち切り」「足の出」の3点をポイントにして見ます。足の良い子は必ず伸びます。 一般的に今は成績が残せていなくても、足が前に出る選手、真っ直ぐに打ち込むことが出来る選手という意味です。逆に避けながら打つ選手とかは、現在は勝てていたとしても剣道のスタイルを変えない限りは伸びることはありません。

- 以前、中学生を中心に剣道を指導されていたとお聞きしているのですが、大学の剣道と中高生の剣道では指導法でどう違うのでしょうか?

(袖山監督)
剣道と言っても練習法は、中学、高校、大学、社会人でそれぞれ違います。まぁ、本質のところは同じなんですけど。例えば、中学生の剣道は、体力的にも未熟なところがあって 竹刀を持つのがやっとの段階です、だから「打ち込み」が中心の練習になります。高校になって筋力がついてくるので、竹刀の振りを意識した練習になります。体力的にピークを迎える大学と社会人(30歳まで)の時代が体力的に一番充実して くる時期と言えるので本格定な練習を積んでいくのは大学入学後からの時期になると思います。剣道の試合としても、この年代が(勝負としては)面白い試合が出来る時期と言われています。だからこそ、自分としては、卒業したからと言って 剣道を辞めて欲しくないないなと思っています。万一、大学在学中に結果を残せなかったとしても、卒業後でも体力的にはピークが続きますし、まだまだ伸びるチャンスがあるわけですから。
そのためにも、単に学生時代の戦績だけで(剣道を続けるか否かを)判断するような「勝つためだけの剣道」を教えるような指導はしたくないと考えています。

- 監督にとっての理想の剣道とは?

(袖山監督)
自身が試合に出たり見たりする時に、常に心の中で、「勝つためには逃げても良いのか?」と問うているところがありまして、単純に「勝ったから全部良し」とか「負けたから 全部ダメ」という剣道にはしたくないと思っています。勝った試合の中にも反省はありますし、逆に負けた試合であっても、逃げずに積極的に攻めた結果であれば良しと考えます。あとは、剣道の形ですね。指導する学生たちに正攻法の剣道を させて行きたいと思っています。もちろん、結果を求められる場面、例えば大学推薦や就職が掛かっている試合というような「競技志向の強い試合」に出場しなければならない場合は仕方ありませんが。
学生には、勝者は勝者らしく(逃げない)試合をして欲しいし、敗者であっても堂々としているような剣道をして欲しいと思っています。それが剣道だと思いますし、自分が育ってきた剣道も、現在、懇意にさせて頂いている指導者の方も、 そのように考える人達ばかりです。もっとも、私自身、決して強い選手とは言えなかった競技生活を送って来ましたので余計にそう考えるのかも知れませんが。(笑)
全日本剣道連盟が定める「剣道の理念」というのがありまして、それは、「剣道は剣の理法の修練による人間形成の道である。」とされています。そこには、勝ち負けにこだわるとかは、全く書かれていません。

- 後半に向けてのスケジュールと抱負をお願いします。

(袖山監督)
関西学生剣道選手権大会に藤本琢磨(法学部3年)が出場しましたが1回戦で敗退。関西女子学生剣道選手権大会に野口あゆみが出場、1回戦では桃山学院の選手にストレート勝ち しましたが2回戦で敗退しました。兵庫県学生剣道大会の個人戦(男子)で、昨年度は、ベスト8が最高でしたが、今年は4年生の段林祐太(法学部4年)が3位に入賞することが出来ました。女子は、団体でベスト8となり、いずれも着実に力を つけています。今後、もう少し部員数が増えてレギュラー争いが起こるようになれば、更に強くなると考えています。
後半は、9月10日に迫っている関西学生剣道優勝大会(団体戦)があります。昨年は男子がベスト32だったのですが、今年は当然、男女とも昨年以上の成績を残せるよう頑張りたいと思っています。

取材後記

今回の取材で印象に残った言葉は、「勝負だけにこだわるのではなく、正々堂々とあれ」という趣旨のものでした。更に監督は、選手の将来についても、学生時代だけで剣道を終えてしまうのでは なく、できれば社会人になっても続けて欲しいとも言われます。それは、剣道が単に技術向上だけを目指すものではなく、人間形成や人格完成を目的とする剣道の理念に基づくものであるのだから、生涯自分を磨き続けて欲しいということなの でしょう。監督の説かれる正々堂々の道を貫いて、かつての輝きを一日も早く取り戻して欲しいと感じた取材となりました。