Division of Health and Hygienic Sciences,
Faculty of Pharmaceutical Sciences, Himeji Dokkyo University
姫路獨協大学薬学部 衛生化学研究室
Research Projects
研究プロジェクト
[Our Interests]
1. 大腸の粘液産生機構とその制御システムの解明
大腸の内腔には膨大な数の細菌が常に存在していますが、大腸には粘液で構成される2つの層があります。細菌はその層のうち、比較的密度の低い外粘液層(大腸の内腔側の粘液層: outer mucus layer)にいます。それより内側の粘液層(大腸粘膜側の粘液層: inner mucus layer)は密度が高く、細菌が内部までは侵入できないような仕組みとなっています。つまり、粘液層によって細菌は大腸粘膜から離れて位置することで炎症が起きないようになっています。このことから大腸での粘液産生の制御は、生体防御の観点から非常に重要な意義を持ちます。
粘液の産生は、大腸粘膜の中で粘液産生に特化した「杯細胞」が担っています。しかし、これまで杯細胞の粘液産生の分子機構、および杯細胞の分化や、生存・アポトーシス等による細胞数の維持などの分子機構についてはあまりよくわかっていません。
当研究室では、培養細胞やES細胞の分化システム、実験動物などを用いてこれら杯細胞の粘液産生や分化制御の分子機構を明らかにして、潰瘍性大腸炎などの慢性疾患の病態形成機構の解明に繋げることを目指しています。
2. 唾液腺の唾液産生機構とその制御システムの解明
唾液は唾液腺(主に耳下腺・顎下腺・舌下腺)で産生され、口腔内の洗浄作用、食物の消化や歯の修復作用などを有しています。その他に、粘膜保護液としての機能を有していることと、抗菌性物質を含有することから生体にとって有害な細菌が粘膜に侵入するのを防ぐための生体防御の役割も担っています。このように、唾液の機能は多岐に渡ります。そのため、唾液の分泌量が低下することがあれば、その影響は全身にも及びます。従って、健康維持の観点からも唾液の産生制御機構を理解することは非常に重要です。
唾液腺の構造は、腺房部と線条部導管から成り、唾液腺幹細胞がそれらの構造維持に関わると考えられていますが、その詳細については明らかではありません。
我々はES細胞の分化システム、実験動物などを用いて、唾液腺の導管や腺房の細胞の分化や維持の分子機構について明らかにし、唾液量の低下などが原因となり人々のQOLの低下を生じさせる口腔乾燥症の予防法や治療法開発に繋げることを目指しています。
3. 表皮関連外分泌腺の制御システムの解明
生体を覆う皮膚はバリアとして外界からの物理的な防壁をなしていますが、その皮膚には汗腺や皮脂腺などの外分泌腺が存在し、汗や皮脂などを体外に分泌しています。
汗は体温調節や保湿などの役割の他に、その中に含まれる抗菌成分により細菌の繁殖を防ぐ作用もあります。また、皮脂も保湿効果の他に、皮膚を弱酸性に保ち、皮膚の常在細菌のバランスを保つことで生体にとって病原性のある細菌の増殖を抑制します。つまり、汗や皮脂は感染防御のための機能を有し生体防御の役割を担っています。
当研究室では、培養細胞やES細胞の分化システムや実験動物を用いて、汗腺や皮脂腺の形成や維持に関わる分子機構の探索を進めています。
これらの知見を積み重ねることで、多汗症や、無汗症といった病気や、皮脂腺の分泌異常が原因となる痤瘡(ニキビ)の治療法開発などに繋げていきたいと考えています。
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