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【報告】薬学部5年生の山下歩美さんが、第34回関西地区ペプチドセミナーで優秀ポスター賞を受賞! ~昨年の中谷さんに続く、同セミナーでの栄誉~ [薬学部]

2017年12月16日に甲南大学ポートアイランドキャンパスで開催された「第34回関西地区ペプチドセミナー」で、薬学部生物分析化学研究室・学部5年生の山下歩美さんがポスター発表した論文「人工RINGフィンガーを用いた簡便なE2活性の検出 ~E2特異性を担うアミノ酸残基の探索~」が『優秀ポスター賞』を受賞しました。これは、前回の「第33回関西地区ペプチドセミナー」で優秀発表賞を受賞した中谷有沙さんに続く栄誉です。



生物分析化学研究室では、かねてより准教授の宮本和英先生を中心に、ユビキチンを介したタンパク質分解系の一部機能を模倣した人工タンパク質の設計・開発を行ってきました。

「ユビキチンを介したタンパク質分解系」では、ユビキチン活性化酵素(E1)、ユビキチン結合酵素(E2)、ユビキチンリガーゼ(E3)の3つの酵素からなる連続的な反応によって、古くなって機能が低下したタンパク質にユビキチンが付加されます。そのユビキチンが目印となって細胞内で不要なタンパク質が分解されるため、例えば、E2の酵素機能の異常は、ヒトの疾患を引き起こす一因として知られています。

ヒトでは、E1は2種類しかありませんが、E2は約30種類、さらにE3は数百以上もの種類が存在し、それらの組合せによって、細胞内に数多く生じる不要タンパク質の多様性に対応しています。しかし、逆に言えば、数多くの反応が並行して連続的に進行しているため、個々の酵素の活性だけを取り出して測定することは非常に難しく、ユビキチン化反応は、その異常が疾患と関連付けられながら、これまで病態の診断等に利用されることはありませんでした。

宮本先生らは、PHDと呼ばれる別の小さなタンパク質の土台に、SIAH1と呼ばれるE3酵素のE2結合部位(RINGフィンガー)だけを移植することにより、E2から直接(E3を介さずに)ユビキチンを受け取ることができるコンパクトな人工タンパク質(人工RINGフィンガー)を開発しました。この人工RINGフィンガーを基質として用いることにより、E3の多様性に影響されることなく、純粋にE2のユビキチン転移活性のみを測定することができます。

今回の山下さんの発表では、人工RINGフィンガーに移植されたE2結合部位のアミノ酸配列を系統的に変異させることにより、多種類あるE2のうち、どのE2で人工RINGフィンガーがユビキチン化されるようになるかを観測しました。人工RINGフィンガーを基質として採用することにより多様なE3がなくてもユビキチン化活性を測定できるようになりましたが、この実験では、移植するE2結合部位の配列を操作することにより、さらに活性測定対象であるE2の種類を絞り込むことができる可能性を示しました。

今後、この研究が進展して、ユビキチン化反応の機能異常が原因とされる様々な疾患と特定のE2活性との間に相関が見出されるようになれば、それぞれの疾患のみを特異的に診断できるシステムを開発できるようになると期待されます。