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2021年04月09日
医療保健学部・薬学部

【報告】薬学部 内田特任助教、姉妹染色分体の分配異常を防止する新規メカニズムを明らかに:Current Biologyに論文掲載 [薬学部]

薬学部・ゲノム解析学研究室の内田和彦特任助教は、(公財)がん研究会・がん研究所・実験病理部(広田亨研究グループ)らと行った研究で、姉妹染色分体の分配異常を防止する新規メカニズムを明らかにしました。研究成果はアメリカ国Cell Pressが発行するCurrent Biology(電子版、2021年3月1日付け)に掲載されました。

分裂期チェックポイントは、姉妹染色分体が正確に娘細胞に分配できる状態になるまで、細胞分裂の進行を止める機構です。具体的には細胞分裂前期と中期の間のところで止まります。姉妹染色分体を分配する準備が整うと、チェックポイントに関連する分子は不活性化されます。この不活性化は別の反応を促し、最終的には姉妹染色分体をつなぎとめているコヒーシンという分子が除去されます。その結果、娘細胞への染色体分配が可能になります。



内田特任助教らは、分裂中期、染色体にある動原体が、(動原体に結合している微小管によって)頻繁に伸縮することを発見し、この現象を「動原体ストレッチング」と名付けました。次に内田らはこのストレッチングの重要性を調べました。結果、ストレッチングは、分裂期チェックポイント関連分子の完全な不活性化に必要であることを明らかにしました。完全な不活性化によって、コヒーシンは十分に染色分体から除去され、染色体分配が失敗することなく行われることも明らかにしました(図A)。

がん、特に悪性のがん細胞は、よく染色体の分配に失敗することが知られています。この異常は、がんの発生、悪性化、そして薬剤耐性能の獲得に寄与するとされています。内田らは多くのがん細胞では、動原体ストレッチングの発生頻度が正常細胞よりも低いことを発見しました。それによって、分裂期チェックポイント分子の不完全な不活性化、コヒーシンの不十分な除去、そして染色体分配の異常が生じる「可能性」が考えられます(図B)。

参考論文:

Kazuhiko S.K. Uchida, Minji Jo, Kota Nagasaka, Motoko Takahashi, Norihisa Shindo, Katsushi Shibata, Kozo Tanaka, Hiroshi Masumoto, Tatsuo Fukagawa, and Toru Hirota.

Kinetochore stretching-mediated rapid silencing of the spindle-assembly checkpoint required for failsafe chromosome segregation.

Current Biology (2021). https://doi.org/10.1016/j.cub.2021.01.062