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2010年01月13日

大麻等の禁止薬物の乱用防止について[教学部]

教学部長より

若者による大麻等禁止薬物の乱用事件が後を絶ちません。特に、大学生の大麻汚染が深刻な社会問題となっています。禁止薬物の所持、使用、売買等の行為は、重大な犯罪です。絶対に行ってはなりません。学生諸君は、問題の重要性をよく認識し、決して禁止薬物に関わることのないよう、強く要請します。本学は、このような違法行為に対して厳罰をもって臨みます。



薬学部教授・健康管理室室長 西郷勝康より

大麻(マリファナ)による健康問題
■大麻って?
大麻はクワ科の一年草で、花、葉、茎、種子などを乾燥させ、タバコのようにして煙を吸うことにより効果を発揮しますが、本邦では「大麻取締法」により厳しく規制されています。多くの国で麻薬として規制され、所持しているだけで死刑や無期懲役となる場合もあると言われています。
大麻にはカンナビノールという向精神作用をもつ物質が含まれ、一時的な酩酊感・陶酔感・幻覚作用や心地よさなど、いわゆる「ハイ(high)な状態」がもたらされるため、嗜好品として非合法的に吸入~摂取されることがあります。近年、学生や主婦、あるいは有名人、関取などでもその保持が検出され、大きな話題になったことはみなさんご存知の通りです。

■大麻の影響
ここでは、大麻の及ぼす健康問題について簡単に解説させてもらいます。
カンナビノールは生体内でカンナビノイドという物質に変化し、脳などに存在するカンナビノイド受容体(CB-1)に結合し作用を示します。
大麻の使用による短期的な影響は、記憶・学習・思考・問題解決の困難、知覚の変化(形・色・明るさに変化がみられ、時間の経過がゆっくりと感じるなど)、集中力の低下、緊張の緩和、高揚感、多弁、心拍数の増加、口の乾き、目の充血、食欲の増強などです。不安、パニック、うつ、そう状態、突飛な行動、攻撃的な行動、妄想、幻覚などがあらわれる場合もあります。

□大麻の脳・精神・行動への害
カンナビノイド受容体は大脳基底核(運動、感情、学習などを司る)、小脳(運動を調整する)、海馬(短期記憶に関係する)、および大脳新皮質(脳の高次機能を司る)などに多くみられ、カンナビノイドによりこれらの作用が障害を受け、一時的に脳が損傷されたような状態になるわけです。若年からの大麻常習では、大脳の灰白質(中枢神経の神経細胞が密集している部分)の割合が小さくなるとの報告もあります。

大麻の常習乱用者には、
1) 忍耐力の欠如
2) 感情の起伏や、喜怒哀楽の振幅が非常に大きい(精神運動興奮という)
3) もうろう状態(終日、ぼーっと過ごすなど)
4) 抑うつ状態(自発的な活動や思考がほとんどできない無動機症候群)、自己陶酔、病的虚言や偏執病的症状
5) 学業・就業成績の低劣化、知的障害
6) 交通違反、破壊行為、万引きなど様々な違法行為
7) 幻覚妄想 本人に被害を与えるような幻覚や、追跡されるなどの迫害妄想が多い

など、以前と比べて著しい行動パターンの変化がみられます。さらに、統合失調症やそううつ病を悪化させるとも考えられています。
また依存症になると、大麻が使用できない場合、禁断症状が出現します。禁断症状は、短気、不安、抑うつ、攻撃的傾向、不眠、食欲不振、悪寒、疲労感などで、常習者はやめることが難しくなります。

□大麻の身体的影響
血液の酸素運搬能を障害するため、心臓発作が起こりやすくなります。 大麻の煙には、ベンゾピレンなどの発ガン性物質もタバコより多く含まれ、咽頭、気道、肺への影響が推察されます。肺の微細構造が不可逆的に破壊され、弾性が低下する肺気腫を併発することも知られています。
免疫系細胞には、もう一種類の受容体CB-2の存在が見出され、免疫システムへの障害とそれに基づく発ガンの危険性も指摘されています。
大麻を常習する母親から生まれる児には、早産や低出生体重児がみられる傾向があり、喫煙と同様に、一酸化炭素を吸い込むことにより、胎児の酸素不足による悪影響も危惧されます。男性でも、テストステロン(性ホルモン)を大幅に低下させます。

 以上のように、大麻は安全な薬では決してなく、違法で有害な薬物です。誘惑に負けないようにしたいですね。