姫路獨協大学 薬学部
生理学研究室

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3月16日〜18日、横浜パシフィコにて第82回薬理学会年会が開催されました。当研究室の共同研究先から「線虫C. elegansにおいて、新規7回膜貫通型受容体DCAR-1は、水溶性物質に対する忌避応答に関与する」(横浜市大・医・薬理学)の発表がありました。当初、ドーパミンの前駆体ドーパ(3,4-dihydroxyphenlalanin)の受容体としてクローニング された分子が、 dihydroxycafeic acidの受容体として線虫忌避行動に関与していることを示す内容です。他にも興味深い発表はいくつかあり、その中で特に感銘を受けたのが江橋節郎賞を受賞された京都大学山中伸弥 教授の講演でした。山中先生は、世界に先駆けて iPS細胞を樹立されたことで有名ですが、 研究者になられた理由が「外科医としての腕が今一つだったので・・・」と笑いながらおっしゃられました。 最初の「受容体拮抗剤を用いた研究」からは、「拮抗剤は必ずしも一つのタンパク質の機能のみを抑制するとは限らない」ことを学ばれたそうです。 そこで、ある特定のタンパク質の機能のみを抑制しうるノックアウトマウスを用いた研究にうつられました。(尤も、ある特定のタンパク質をノックアウトしても類似のタンパク質が発現してその機能を代償しうることは後に分ってきましたが。)ノックアウトマウスの作製からES細胞の研究に展回されたのですが、受精卵を用いるという倫理的問題から日米で厳しく規制されています。そこで、受精卵由来ES細胞と同様の分化万能性を有する体細胞由来iPS細胞の研究へと発展されたそうです。このように、iPS細胞樹立に至るまでの研究歴も披露して下さり、門外漢にも分るように説いてくれました。素人はとかく易しい事を小難しくしてしまいがちなので、専門家なら難しいことを易しく説明できるよう参考にしたいものです。最後に、「上司の立てる仮説は必ずしも正しいとは限らない」という言葉はとても示唆に富む名言だと思いました。ややもすれば上司の仮説にあうdataを採用し、都合の悪いデータには目をつぶってしまいがちです。その言葉は、「例え上司の仮説の反証であったとしても、科学の進歩に貢献すべきだ」という研究者としての矜持を示してました。

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