学部・大学院


こども保健学科 教員コラム

「自然が教えてくれること」

松村 雅代 (スポーツ社会学・発育発達学)


 長年体育の授業で野外活動を行ってきた。多い時には年間4ヵ所。夏は、徳島県の阿南の海、福井県、石川県にまたがる白山へ。冬は、山梨県の富士吉田、長野県の戸隠へ行き、自然の素晴らしさに触れる事ができた。
 現在、夏は阿南の海へ、冬は戸隠の山だけになったが、毎年訪れる度に、海や山は様々な姿を見せてくれる。
 
 阿南の海は穏やかで、シュノーケリングで海中散策を楽しんだり、 サザエやトコブシ、アワビやタコを捕獲する事もある。また、無人島へカヌーやカヤックで渡り、釣りをして取れた魚を料理する事もある。早朝や夕方、ぼんやり海を眺めていると、日の光が海の色を変えていくのがよく分る。夜の海は、遠く船の光がぼんやりと見えたり、月の光が島を深い黒色に見せてくれる。

 冬の戸隠は雪深く、踏みしめるとギュギュと鳴り、まるで片栗粉の上を滑っている様な感覚になる。晴れた日には瑪瑙山(メノウ山)から白馬、鹿島槍を望む事が出来る。
 戸隠連峰は、その昔修験者の地とされ、女人禁制の石碑も残る程霊場として神秘的な山だ。また戸隠神社が有名で、中でも戸隠山の登山口にある奥社から見上げる戸隠山は、あまりの迫力から恐ろしさすら感じる。この様な戸隠の地を、スキーを使って移動し、森の中で昼食を取ったり、完全結氷している鏡池の上を、期間限定で活動の場と出来る醍醐味は格別だ。

 残念な事に、最近の異常気象の影響で、自然の猛威を伝えるニュースが多くなってきた。その影響は、阿南にも戸隠にも及んでいる。今まで見た事のないような色鮮やかな魚が泳いでいたり、雨が雪になる地で朝から雨が降り続いたりと、自然の変化を身近に感じる。
 この様な中でも、バランスを崩しかけている自然は、バランスを保つために徐々に変化し続け、我々にやさしさと穏やかさを与えてくれる。
 自然の中から現実社会に戻ると、一時空虚さを感じてしまう。以前は、何がそう感じさせるのか、いつも不思議に思っていた。最近、人工的なバランスでは感じられない心地良さを、自然のバランスが与えてくれているのではないかと感じる様になった。その心地良さは、長い年月をかけて作りあげた地形、そこで繰り広げられる自然の営みや摂理から「生きる」と言うことが成せる技だと感じずにはいられない。



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