学部・大学院


こども保健学科 教員コラム

緑の指

植田有美子 (臨床心理学・学生相談)


 空高く、空気にもだんだん秋の気配が濃く感じられるようになってきました。朝小さなベランダに植えた植物に水をやるのが日課です。毎日見ているはずなのに、ある時急に花が咲いていたり、実がなっていたりで驚くことがあります。また、知らない間に種がこぼれて、思わぬところに芽が顔を出していたり、枯れたと思っていた球根から鮮やかな緑がのぞいて感動するときもあります。

  英語の表現で、植物を育てる才能のある人のことを指して“緑の指”を持っている、といいます。身近にいる“緑の指”の持ち主に言わせれば(残念ながら私はとても“緑の指”を持つまでには至りません)、世話をすればするほどいいというものではなく、水や肥料はやりすぎてもだめ、やらなさすぎてもだめだそうです。

 子育て支援の場に関わっていると、子どもたちの育ちはもちろんですが、保護者の方々の親としての育ちにも付き添わせていただいているという思いを深くします。みんなそれぞれ、せいいっぱい、良かれと思うことをしているつもりだけど、本当にこれでいいの?何か間違ったことをしているのでは?取り返しのつかないことになったらどうしよう?…などなど、自分の子育てに自信が持てない、という声をよく耳にします。

挿絵画像  
 

 時熟という言葉がありますが、ある意味では園芸も子育ても、適当なタイミングで適当な支えをしてやることで、そのもの自身が持つ力が引き出され、豊かな実りにつながるという共通点があるように思います。特に子育てにおいては、そのタイミングをはかることは意識せずに“ふつうに”行われている場合が多いけれど、実はとても深い観察と、それぞれの親子の絆に基づいているのではないかと感じています。その“ふつう”こそが難しいとも言えるのですが、私たちはみんな、そういったタイミングを感じ取る力を持っているのではないでしょうか。

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