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薬学部コラム

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第52回

牡蠣の食べ方と効用

生物分析化学研究室  宮本 和英 准教授


 姫路市は瀬戸内海に面して、その播磨灘では岩礁が多くあり牡蠣の養殖、イカナゴが特産品で知られています。毎年11月頃から牡蠣は解禁となり、生・焼き牡蠣が地元飲食店や家庭の
(図1) 網上の焼き牡蠣
食卓に並び、また、姫路で開催されたB-1グランプリでも牡蠣のお好み焼きなど大変盛況だったようです。私は御津町室津の牡蠣を好んで頂いておりますが、家庭でも焼いて召し上がれますので、お勧めの料理方法をご紹介します(図1)。まず、平らな面から3分ほど焼き、逆の面を同じく3分焼きます。殻が少し開いてきますので、そこから更に2分待ちます。平らな面を少し剥がし牡蠣の身が張っている感じになったら出来上がりです。片面だけ焼くと破裂することが有りますので注意してください、両面焼くことが大切です。楽しく焼き牡蠣の料理などトライしてみてはいかがでしょうか。 牡蠣には様々な有用な成分が含まれていますが、なかでも亜鉛が多く含有されていることが特徴の一つです。亜鉛はヒト体内に約2グラムあり、DNAや蛋白質の合成、また、それらの機能発現に重要な役割を担っていますので、亜鉛不足は成長障害、皮膚炎、味覚障害など様々な病因になります。最近では食事で賄いきれない分を補助するサプリメント商品もありますが、牡蠣を美味しく頂いて亜鉛不足を解消してみるのも良いですよ。必要量を上手に摂取することが必須です。

(図2) リングフィンガーの立体構造
 さて、亜鉛は体内で具体的にどのような働きをしているのでしょうか、ご紹介します。少し専門的になりますが、ヒトを含む多くの生物には、亜鉛と結合した蛋白質が多数存在しており、亜鉛結合蛋白質と呼んでいます。例えば、ジンクフィンガー、リングフィンガー、ピーエイチディフィンガー、ビーボックスフィンガー、ミズフィンガーなど様々形を有する立体構造があります。私のこれまでの研究で解明できたリングフィンガーの立体構造を図2に示します。2つの亜鉛と結合することで、ヘリックス構造を形成しています。亜鉛が無ければ、このような立体構造を形成することができなくなり、全く無秩序なランダムな構造になってしまい、リングフィンガーが持つ本来の機能が発揮できなくなります。体内におけるリングフィンガーは酵素として機能しており、不要となった蛋白質の分解を司る品質管理の機能(仕事)をしています。従って、亜鉛不足などによってリングフィンガー酵素の機能が欠損すれば、様々な疾患に罹患することは容易に推測できると思います。これまでの研究から、リングフィンガーをはじめ亜鉛結合蛋白質の機能は少しずつ解明されてきておりますが、肺癌、白血病、乳癌などのガンや、アルツハイマー病、パーキンソン病、関節リウマチなど非常に多くの疾患と関わっていることが分かってきています。
 このように亜鉛は我々にとって非常に大切な仕事をしてくれています。本コラムを参考に、亜鉛を含有する食品の摂取の心掛けをし、楽しく健康的な生活につながるように多くの方に牡蠣を好んで頂ければと願っております。

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