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薬学部コラム

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第7回

未来への架け橋

薬剤学研究室 堀之内正則 准教授


米国発の金融危機の中、不安と緊張と共に2009年が幕を開けた。何かワクワク、ドキドキするような出来事はないものか。

日本国内ではあまり関心がない東京の2016年夏季オリンピック招致活動。昨年、同じアジアの北京で開催されたばかりだからか、都民でさえも支持率はおよそ6割にとどまっている。単に経済効果やインフラ拡充が目的であると憶測され、到底関心事にはならない様子。しかし、2002年サッカー日韓ワールドカップ。日本中が熱気と興奮に包まれ、サッカー人気を超えて世界最大のスポーツ祭典の開催を大いに喜んだ。今年、いよいよ東京オリンピックの開催が決まるかと聞けば、期待に胸を躍らせる人も多いのではないだろうか。

1964年東京大会は、戦後の日本の復興を世界中に披露し、先進国としての復帰を強く印象付けたといわれる。
今回、再招致を目指す意図は。

現在の東京、地球上のどこの都市よりも発熱が激しいそうだ。東京ばかりか、今や世界中で化石燃料や電気などのエネルギー消費は止まることを知らず、至る所で温暖化による危機的な状況がみられる。世界一コンパクトなオリンピックを掲げた東京は、計画概要の総合評価でトップとなった。ごみ埋め立て地に森を作る構想や太陽光発電の選手村を作る計画など、環境への配慮が重視されている。日本の技術力と英知を駆使し、世界が進むべき方向をアピールする機会としての招致と考えるとますます応援したい。

@Wikipedia

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さて2016年オリンピック開催立候補都市は、東京のほか、マドリード(スペイン)、リオデジャネイロ(ブラジル)およびシカゴ(米国)に絞られている。開催時期に懸念があるのは東京ばかりではない。マドリードは2012年ロンドン大会の次期開催となり、1960年以降、オリンピックが同じ地域内で連続開催されたことはない。リオデジャネイロは2014年のサッカーワールドカップブラジル大会と連続開催になる。しかし、評価は候補地のポテンシャルやプランなどから行われる。世界の政治・経済への影響が時に優先されることは前回の北京大会でも明らか。投票権を持つ国際オリンピック委員会(IOC)委員は経済・金融危機の元凶である米国を不安視し、自国経済の前途を危惧しているだろう。逆に、世界同時不況からの再建には米国経済の信頼回復なくして有り得ない境遇は、米国の追い風になるかも知れない。シカゴは、昨年11月の欧州オリンピック委員会総会で、当地をホームタウンとするかのオバマ次期米大統領を当選直後にもかかわらずビデオレターに起用し、連邦政府のバックアップを強く主張した。6月の立候補都市によるプレゼンテーションも注目される。

計画性が高く、先進都市の範を目指す東京か、カリスマ的なリーダーを抱え、世界経済の復興を担うアメリカ(シカゴ)か、はたまた前回惜しくも涙を飲んだマドリードか、南米初開催を祈願するリオか。東京招致の気運が高まることを願いつつ10月2日の決選を待ちたい。

7年後の2016年、世の中はどのように変化しているのか。ますます加速している身体の衰えはどこまで進んでいるのか。最近歩き始めた娘とはうまくやっているだろうか。そうだオリンピックを種に、娘に記憶のない頃の話をすることにしよう。歓喜に満ちた東京オリンピックを観戦しながら。

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