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薬学部コラム

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第26回

歩数計

薬剤学研究室 中村 任 教授


 歩数計。いわゆる万歩計のことですが、「万歩計」というのは登録商標だそうです。

 いつだったか歩数計を家族にもらいました。年齢を重ねるごとに変わりゆく体型を気にして「歩いた方がいい」ということでしょうか。プレゼントの意図はともかくとして、「日本一周歩数計の旅」という名の歩数計を使ってみることにしました。この歩数計は、単に日々の歩数のカウントや累積だけでなく、ユーザーが任意の場所を登録し、登録地点から歩いた歩数(距離)に応じて日本の沿岸を進むことで仮想的に日本一周を体験できるというものです。早速、筆者は出発地点を「兵庫県」に設定し、日本海側を西へと向かうバーチャル・ウォ-キングの日々を送り始めました。

 歩数計には液晶画面があり、到達した各地域の地名や名産などの情報を表示することもできます。スタート時の地名は忘れてしまいましたが、数日も使っていると「香住」が表示されたことを記憶しています。名産は「カニ」です。冬の日本海ですね。このまま西に向かうと、次は「余部」でしょうか。そうであれば名産は「鉄橋」か?「鉄橋は名産ではないか」などと考えていると液晶画面を確認するのが結構楽しくなります。意識的・意欲的に歩数を稼ぐようになり、また普段の徒歩での移動も不思議と楽しくなった?気がします。制作者の術中にはまったともいえます。
 数ヶ月は経ったでしょうか、ようやく兵庫県を抜け出し鳥取県へと入ることができました。初めての県境を越えたわけです。日本一周はほど遠いのですが、この時点で既にある種の満足感や達成感を得ることができました。数日後、液晶表示は見えなくなりました。電池切れでしょう。電池を交換して歩数計を再度使い始めようとしました。ところが、「おや?」、現在地が羽田空港になっています。これまでの記録はどこへいったのでしょうか? 嫌な汗が出てきました。結局何だかよくわからなかったのですが、気を取り直して今度は東京湾を東へと向かうバーチャル・ウォ-キングを始めました。
 この頃になると、歩き慣れたというか、歩数計に慣れたというか、気がついた時には千葉県に入っていました。「(ち)千葉県の ほとんど半島 それ本当」などという都道府県カルタがあるのですが、千葉県から茨城県までを海岸沿いに歩くと結構な距離があります。何とか茨城県に入り、次は「水戸」の「納豆」が目標かな、などと気持ちを新たにして茨城県を歩き始めました。
 旅はここまで。数日後、外出した際に歩数計を紛失してしまいました。

 現在、歩数計やその機能を持ち合わせたものはたくさんの種類があり、歩数に応じてストーリーが進んでいくものやキャラクターが育っていくものなどがあるようです。筆者は、日本一周は断念しましたが、新たな歩数計によって「社長への道」を歩き通すことができました。今回、歩数計によって「歩くこと」への意識が変わったり意欲が湧いたりしたわけですが、日常生活の中には視点を変えることで意識的・意欲的に取り組めそうなことがまだまだありそうです。

*本コラムは、当該製品の宣伝や批評を目的としたものではありません。    

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