COLUMN

薬学部 コラム 第64回

季節感覚のちがい

臨床薬効評価学研究室 河野 奨 助教

~北海道から初めて姫路で生活をするようになって~

昨年の2月末のある朝、大学の駐車場に車を止めた時うぐいすの「ホーホケキョ」と鳴くのが聞こえて2月なのにうぐいす・・・?と思ってしまった。これまで、北海道で生活をしていたので、うぐいすの鳴き声が聞こえてくるのは5月の連休頃になってからでした。北海道ではこの頃ようやく春を実感出来たので、すごく不思議でした。

うぐいすの鳴き声は春の訪れを感じさせるため、俳句や和歌では春の季語として使われています。また、春一番(立春を過ぎて始め吹く南風)やさくらの開花日と並んで、気象観測データとして全国各地の気象台で観測され、気象庁がその観測日を公開しています。

そこで、気象庁の生物季節観測データで昨年のうぐいすの鳴いた日を調べると、表の様でした。

2015年 うぐいす あじさい 梅雨
観測日 平年差 観測日 平年差 期間(平年)
北海道 4月22日 +3 7月14日 -4  
東北南部 3月25日 +16 6月22日 -10 6月12日~7月25日
関東 3月17日 0 6月13日 +1 6月8日~7月21日
近畿 2月28日   6月中旬   6月7日~7月21日
中国 3月2日 -3 6月11日 -1 6月7日~7月21日
沖縄 2月26日 +4 5月下旬   5月9日~6月23日

なんと、昨年2015は北海道と近畿では2ヶ月近く離れて観測されています。

気象庁が提供している観測記録にはうぐいす以外にも、さくらの開花日、カエデの紅葉日、あぶらぜみの鳴いた日なども観測の対象となっており、季節の進み具合や気候の違いなどの総合的な気象状況の推移を把握するために用いられており、テレビ、新聞などで目にする機会も多いと思います。

この中で、あじさいの花も特徴的で筆者が子供のころは夏に咲く花だと思っていました。 あじさいの開花日は、本州ではちょうど梅雨の時期に開花することが多く、大多数の方が雨の季節に咲く花との印象を持たれています。(筆者もこちらで暮らしてみて、妙に納得してしまいました。)一方、北海道では7月中旬に開花します。この頃になると日中気温が上昇し暑くなりはじめる時期です。また梅雨も無いので、夏の花との印象でした。


この季節感覚の違いで、困ったエピソードを紹介します。御礼状などの手紙を書くときの時候の挨拶を書いている時に起こりました。11月下旬に投函する手紙の時候の挨拶で、「朝晩の冷え込みが厳しくなり秋の深まりを感じます。」と「~厳しくなり冬の訪れを感じます。」では、どちらがより、正しい季節感を表しているか、姫路の方と議論になりました。


筆者の感覚では、姫路ではまだ初雪が降っていない(当然、降るわけはありませんが・・・)、霜が降りるほど気温が下がっていない、まだ紅葉が楽しめる状況だったので、前者の「~秋の深まり~」が、姫路ではまだ紅葉が楽しめることを暗に相手に伝えられるかと思い、季節感覚を表す言葉として良いと思っていました。

しかし、姫路の方に「この気温ではもう冬だよ」と言われ、さらに暦の上で立冬や小雪を過ぎているので冬を感じさせる言葉があった方が、より季節の進み具合がわかって良いとアドバイスを頂き、そのときの手紙は後者の「~冬の訪れを~」となりました。

ちなみに筆者の感覚(北海道出身者の多く)は、雪が降って、積もった雪が溶けなくなってからが冬で、積もった雪がなくなって地面が見えてきたら春です。

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