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薬学部コラム

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第29回

新しい年を迎えて

ゲノム解析学研究室 白木 孝 講師


 皆様、明けましておめでとうございます。
2011年の幕が開きました。変化のスピードがとても速くなっているこの時代ですが、今年は一体どのような年になって行くのでしょうか。
 薬学教育におきましても、6年制の新課程が始まって5年近くが経過しようとしております。薬学共用試験、病院・薬局実務実習、新国家試験を初めとして、様々な制度やカリキュラムの変化の中で、薬学生は毎日学習を続けております。

 そのような中、先月本学で初めてのOSCE本試験が行われました。このコラムを読んでおられる方はご存知のことと思いますが、OSCEとはObjective Structured Clinical Examination(客観的臨床能力試験)の略で、4年次に行われる薬学共用試験の中で、技能・態度を評価するための試験です。6年制課程では知識を評価する試験であるCBT(Computer-based Testing)とともに合格していないと、5年次での参加型実習である病院・薬局実務実習に行くことができません。全国的には昨年度からOSCE、CBTは行われておりますが、本学は最上級生が現在4年生ですので、今年度が初めての試験となりました。
 当日、学生は極度の緊張感にさらされていたと思います。一発勝負の試験ですから当然のことでしょう。私たちは実務実習事前学習の中で、指導すべきことや彼らが考えるべきことは全て伝えたつもりでしたが、それをどう受け止め、自分のものにできているかということを考えると不安で、祈るような気持ちで受験している彼らの背中を見ていました。

 彼らはOSCE、CBTに合格しても、それは実務実習への参加の資格を与えられたに過ぎません。大学では教育することができない現場の長期実習で、何を感じ何を学んで行くかが大切ですし、また無事に国家試験に合格して卒業しても、それは薬剤師の免許を与えられただけで、実際の勉強はそこから始まって行くと言ってもいいでしょう。
 現代は非常に変化の速い時代です。様々な社会保障制度も頻繁に変更されていますし、新しい医薬品や既存のものの効能・効果の追加が毎月のように承認されています。新しい作用機序の医薬品も開発されており、分子標的薬と呼ばれる狙った所にピンポイントで作用する医薬品も増えてきています。現場の経験が豊かな薬剤師であっても日々勉強を欠かすことはできず、少し気を許していると「どういう作用で何のために使う薬なのか分からない」というものが、次々と薬の棚に並んで行きそうです。
 また、現場に出ると様々な患者さんや医師、看護師など他職種の医療従事者との関わりがでてきますので、人間性も高めて行かなければなりません。最初はそういう所に戸惑いを覚えることも多いでしょう。

 本学でも学生を見ていると、学年が進んで行くに従い、それまでと違った自覚が目覚めてきて、自ら目標を設定してがんばっているように感じます。そのような学生の確かな成長を見られることは、我々大学の教員の喜びでもあり、早く薬剤師として花開き、社会に役に立つような人間になってほしいと願ってやみません。


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