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薬学部コラム

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第45回

朝食の効用

健康管理学研究室 西郷 勝康 教授


 朝食の効用 起床後の私の仕事、まず猫のコロ助にえさをあげることに始まる。彼の夕食は私の家内の仕事になるので、毎日おなじキャットフード「かりかり」君である。 そこでせめて朝食は豊かにしてあげたい、今日は何にしてあげようか?選択肢は多くはないが、少しでもいい人生(猫生)をおくらせてやりたいと思い、やはり美味いものをあげようと考えている。カツオブシご飯、当初はがつがつ食ってくれたが最近はだめ。いろいろなパックのキャットフード、たまにはドッグフード、我々の夕食の残りの魚の頭に焼豚、などにも好物のものもある。しかしどうも彼には「かりかり」が一番向いているらしい。いやはや、やや寂しい朝食ではないか!
 よく、朝食をきちんとることが一日のリズムを作り、脳を活性化させるために必要だという。しかし、私の仕事上の知人(K先生)で、決して朝食は摂らないしタバコも吸い、ちゃんと医学部の教授になったヒトもいる。朝食はどちらでも大した問題ではないのか? しかしながら、K先生の一例から結論を導くことはもちろん科学的でない。
 コロ助が食事を終えると、私の膝に乗りしばしのスキンシップとブラッシッングを楽しむ。私にとって一種の至福の時間帯である。この儀式を終えてから、私も朝食を頂く。これは、昨夜の残り物を含めて様々。でも朝食抜きは大変つらい。

 大学に行くと、私の部屋に9匹の仲間たちが、やはり朝食を待っている。メダカたちだ。ぱらぱらっと振りかけるだけの食事だが、眺めているとホッとする。この気分の良さを経験でけるだけでも、朝食の効用は大きい!
 今世紀の始めに作られた「健康日本21」(文科省、厚労省、農水省2000、第2次2012)には、数々の10年間で達成すべき健康目標があげられた。この中に、朝食欠食者の割合をへらそう、という数値目標が示されている。結果的には10年後の2010でも朝食欠食者(菓子、果物、乳製品、嗜好品などの食品のみの場合も含む)率には大きな変動はなく、20才台男性では30%程度、30才台男性でも25%程度となっている。
 朝食を摂ることの意義について、科学的な注釈が付与されると、若干は意識するヒトが増えるのかも知れない。最近、続けて毎日新聞に興味深い記事が出ていたので紹介する。
 一つは2012年7月の記事(名古屋大学、小田裕昭先生)、夜間の食事はメタボにつながることを、「時計遺伝子」との関連で説明されていた。調整のメカニズムの一つはインスリン分泌であることが判明している。インスリンは膵臓から分泌され、糖の利用を助けるホルモンであり、不足すれば糖尿病につながる。このインスリンを朝食により分泌させ、「時計遺伝子」をリセットすることが、脂肪を分解しエネルギーを消費する上で重要であると言う。つまり、朝食抜きは肥満につながるのであり、日本人の総カロリー摂取量はむしろ減少しているのに肥満率は増加していることへの対策としては重要ではないかと思われる。
 2012年8月には、やはり朝食抜きは太る、という記事が載っていた。同じカロリーの食べ物でも、朝に食べると、夜に食べるよりも熱量の発生が4倍も多いという(女子栄養大学、香川靖雄先生)。また、バランス良く栄養素を摂ることは、記憶力や空間認知などの機能を改善させるらしい。つまり学業や仕事の能率アップ、不注意による事故の防止にもつながる。一方同じ食べるにしても、その順序にも気をつけた方がよいとのこと。食物線維の多い野菜をまず摂ることにより、糖質の吸収を緩やかにすることは、膵臓肝臓への過剰な負担を減らす意味でも重要であろう(城西大学、金本郁男先生)。
 若者には早起きはつらい、とは思う。しかし朝食をしっかり摂ってダイエットに、勉学にいい成果をあげる一つの努力と考えてみてはどうだろうか。

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