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第66回

爆誕!!! ニホニウム!!!

生物有機化学研究室 村重 諒 助教


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2016年6月8日、IUPAC(国際純正・応用化学連合)から、4つの新元素の命名案が発表されました。 うち1つが日本の理化学研究所によって発見された新元素、 その名称案は「ニホニウム」。 新元素発見は、日本はもとよりアジアでは初のことです。 正式な決定は5ヶ月後の11月8日ですが、この時点でかなり嬉しいですよね。



だって周期表に載るんですよ!世界の誰もが見るんですよ!
日本、やるじゃないですか!スゴいですよね? ね? ね?

と言いながら、そんな風に興奮している方はそんなに多くないのもよくわかっています。

「何がスゴいの?」
「役に立つの?」
「周期表?あー、スイヘーリーベねー、高校の頃覚えたねー。けど、日常生活に必要ないよねー?」というのが多くの方の感想じゃないでしょうか。
昨年の梶田隆章先生のニュートリノ振動の発見によるノーベル物理学賞受賞のときも…。
確かに今回のニホニウムの発見によって、すぐに私たちの生活が変わるわけではありません。 しかし、その発見の経緯を知るとスゴい!と言いたくなります。

そこで

(1)ニホニウムを作った技術がスゴい!
(2)ニホニウムを作った研究チームの根性がスゴい!

という2点からニホニウム発見のスゴさを紹介したいと思います。



(1)ニホニウムを作った技術がスゴい!

ニホニウムはこれまで無かった新元素なので、作らなきゃいけません。 ただ、原理はとっても簡単です。
ニホニウムは原子番号113番の元素なんですが、原子番号30番の亜鉛と、83番のビスマスという2つの元素を合体させるんです。
30+83=113、小学生レベルの足し算ですね。
では、亜鉛とビスマスをぶつけて、合体させてみましょう。はい、出来上がりー!



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画像出典:理化学研究所113番元素特設ページ (http://www.nishina.riken.jp/113/

ところが…

元素って1兆分の1cmの大きさです。ものすごく小さいです。もちろん見えません。顕微鏡でも無理です。 そんなもの同士をぶつけるんです!
そうなんです。日本は小さな小さな元素同士をぶつける技術を生み出したんです!
この技術、スゴくないですか?

元素同士を衝突させて新たな元素を作り出すことを『核融合』といいます。 まさに爆誕!!です。 今回は113番元素のニホニウムでしたが、他の元素を作り出すことだってできます。 実際に同じ装置で108番、110番、111番、112番の元素も作っています。

ということは有用で希少な元素(例えばレアメタル)だって人工的に作れるかもしれません。 レアメタルはスマホに必要なんです。人工レアメタル技術が確立されれば…
どうでしょうか?今回のニホニウムの発見は未来の世界に大きな希望をもたらすものだと言えますよね。



(2)ニホニウムを作った技術者の根性がスゴい!

さて、日本が小さな小さな元素をぶつける技術を手に入れた、ということで盛り上がってきたわけですが、実はさらなる問題がありました。

合体するのは、な・なんと100兆回に1回!!
年末ジャンボ宝くじの1等を連続で当てる確率と同じだと!!
無理ゲーだろ!!

そうなんです。ぶつけることができても、めったに合体しないんです。
それでも研究チームは諦めなかったんです。

2003年の挑戦開始から朝も昼も夜もぶつけ続け、2012年まで続けました。
ぶつけた回数は、400兆回。合体したのは…、たった3個…。

ただただ頭が下がります。9年ですよ!9年

この根性、スゴくないですか?


このようにニホニウムは、 研究チームの情熱と弛まぬ努力によって生み出された新たな技術と知識によって発見されました。 この発見は世界の科学をさらなる未踏の地へと進め、多くの研究者や技術者を勇気づけるものです。 日本で発見された、ということも嬉しいですよね。 近い未来、私たちの生活をより豊かにするような新技術が、ニホニウム発見を契機に開発されることを信じてやみません。

いかがでしたでか。
研究チームは現在、未発見の119番と120番に挑戦中です。 理化学研究所の特設ページには、ニホニウム発見の経緯から今後の挑戦まで詳しく記載されており、 研究チームの熱い思いが伝わってきます。是非ご一読下さい。

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