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薬学部コラム

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第31回

薬剤師として思うこと

臨床薬効評価学研究室 清原 義史 准教授


 京都や奈良など古都を訪れますと、薬師如来像と出会うことがあります。薬剤師ならば少しは薬師如来について興味を持ったことがあろうかと思われます。そういう薬剤師である私も少しは興味を持っています。と言いましても全くの無知であり、薬師如来と出会ったのが、城崎でたまたま偶然立ち寄ったお寺のご本尊が薬師如来であったという程度で、全く詳しくはありません。そもそも、子供たちの冬休みを利用しての1泊2日の家族旅行でした。
城崎風景  城崎は時期的にもとてもきれいな雪景色です。やはり、城崎へ行くならば、情緒豊かな冬に訪れるのをお勧めします。すべり止めのついたブーツをはいて歩いていたにも関わらず、足元がおぼつかなく、すべらないよう注意して歩いたのを覚えています。民宿に到着するなり、城崎の町を散策がてら外湯めぐりに出かけました。もうご存知かと思われますが、城崎には外湯が7つもあります。寒いにも関わらず、定番の浴衣姿で下駄を履いて川沿いを歩いたのを覚えています。当時は若かったこともあり、のぼせながらも外湯を全て制覇しました。今なら周ってせいぜい2~3か所程度でしょうか。今から考えるととても楽しかった思い出です。民宿に帰れば一番のお楽しみ、待ちに待ったカニ料理です。低予算での旅行でしたので、食べ放題とはいきませんでしたが、お部屋でとても美味しくいただいたのを覚えています。その日はそのまま就寝し、翌日は帰宅するだけで全く予定がありません。そこで、計画も無く訪問したのが温泉寺でした。城崎ロープウェイに乗るなど観光気分で散策し、私の不確かな記憶では山上の売店で串に刺さった焼き餅を食べた記憶があります。 城崎風景 そして、ロープウェイの麓(薬師公園ポケットパーク)では、 温泉卵を頂戴するなど、とても楽しい参拝でした。後に西国薬師四十九霊場の第二十九番札所と由緒あるお寺と知り、薬剤師としてはもっとまじめに参拝すべきだったと今は少々反省しています。このように若いころには全く興味がなかったのが実情です。
 そこで、今回、少し薬師如来について調べてみました。薬師如来の正式名称は薬師瑠璃光如来というのだそうです。通常、薬師如来像の左手には薬壷(やっこ)がのっていますので、たいていは薬師如来であることがわかります。奥田らの周防国分寺薬師如来の薬壷の成分を分析した結果では、約300年間、生薬、穀物等が中に入っていたとの報告があります(文献1)。しかし、さらに年代の古い薬師如来像の左手には薬壷のない像もあります。その場合、両脇侍に日光、月光菩薩がいるか、十二神将が周りを固めているかで区別することができます。日本において薬師如来が多いのは、疫病などに対する無病息災を祈っての建立であろうかと思われます。しかし、薬師如来については情報が少ないようです。薬師如来は名前の如く病気に対してご利益のある存在として認識されています。しかし、それだけではなく、「薬師瑠璃光如来本願功徳経(薬師経)」の中に12の大願が書かれているそうです。その内の第7番目に病気平癒について書かれているようです。しかし、それだけではなく、庶民が食べ物や衣類に困らないようにする。災難から解放される。など、現世ご利益が得られる存在として日本全国に広がっていったようです。仏教的な知識も無く、私の私見がかなり入っており、解釈に少し無理があったかもしれません。しかし、ここで、感じることは、薬師如来は生薬・漢方等の薬物療法の専門家というだけではなく、慈悲深い存在であったということです。
 我々薬剤師もチーム医療の中で患者様中心の医療に貢献していく必要があります。薬学教育の中で、薬学的知識の教育のみではなく、医療人としての倫理観や思いやりの心、コミュニケーションを通しての患者様の内面的な訴えまで聞き取れる薬剤師を育てていきたいと思います。

文献1)奥田潤他:薬史学雑誌,33,49-62(1998)


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