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薬学部コラム

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第25回

Diabetes Mellitus

薬効評価学教室 横山 照由 教授


 糖尿病の学名は、Diabetes Mellitus と言いますが、秋山房雄著「優しい病態生理」(南山堂)によりますと、Diabetes はギリシャ語のサイホンを意味します。この名称の名付け親Aretaeus(紀元2世紀)は、この患者は多量の水を欲し、絶え間なく尿を出す。あたかもサイホンのようであるとの観察よりこの名前を付けたと言われています。彼の記録では、当時は極めて稀な疾患であると記述されている。しかし、この疾患は文明の発達、食生活の向上と共に増加し、2007年の資料によると糖尿病患者は、約890万人、糖尿病予備軍は約1,320万人合わせると約2,210万人と言われ増加の一途にあります。
 一方、Mellitusは、「蜂蜜のように甘い」という意味で、糖尿病患者の尿が甘いことより付けられた言われています。糖尿病患者の尿が甘いことは、Aretaeusは当時気付いておらず、このことを記述したのは約1,500年後、Thomas Willisです。その後、William CullenによりDiabetesとMellitusが1つになり糖尿病の学名が誕生しました。
 また同書によると、平安時代“この世をばわが世とぞ思う望月の 欠けたることのなしと思えば”との歌を詠んだ藤原道長(一説には源氏物語の主人公、光源氏のモデルであると言われている)は、糖尿病(当時は飲水病と言われていた)を患っていたと言われています。当時、位人臣を極めた道長も晩年は、糖尿病が進行し視力障害(現在の糖尿病性網膜症か)が発現し、眼が見えなくなったと言われています。平安時代の貴族に飲水病が多いことが知られていますが、貴族はやはり美食が多かったのでしょうか。
 美食でもないのに最近糖尿病予備軍入りした老人の呟きです。      

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