祝辞
看護学部2期生の皆さん、学位取得おめでとうございます。看護学部教員を代表してお祝いの気持ちをお伝えします。
皆さんは、私たち教員とともに、学び育ち合う日々を過ごし、学部の歩みをひとつひとつ刻んでいただきました。看護を学ぶ志をしっかり持って、講義、演習、実習と続いた学修を最後まで投げ出さず、真摯に積み重ね、今日の日を迎えられました。その結晶が、手にされた「学位記」です。皆さんの努力と成果に心からの敬意を表します。
さて、2020年は近代看護の礎を築いたナイチンゲールの生誕200年の記念の年でした。
この記念の時にご卒業される皆さんは、新型コロナウイルスの影響という、未だ先の見えない特別な状況でこの日を迎えられました。本来、看護は、人々に寄り添い、絶えずまなざしと耳を傾け、そして、手で触れることを大切にしてきました。しかし、マスクをつけて、3密を避けた新生活様式は、人との関係において、緊張をもたらし、表情が読み取れず、向き合わずに、そして、触れることのないという、看護の基本的態度とは、まるで正反対にみえるような状況を作り出しています。皆さんの学修方法や実習にも大きな制約がありました。とくに、最終学年であった、この1年間の皆さんのお心の中を鑑みますと、いいしれぬ孤独や不安を、強く感じておられたことと推察いたします。しかし、それゆえに、皆さんは、看護の原点について、より深く考える機会をもたれたのではないかと思います。ナイチンゲールは、 「看護」をその人の身体内部に宿る自然治癒力が発動しやすいように、生活のあらゆる側面を通して、その人の生命力に働きかけ、生きる力を引き出すことであると伝えています。新型コロナウイルスの影響下において、命を守るための厳しい看護が示される一方、人とのつながり、暮らしや願いを大切にする、しなやかでやさしい看護が同時に求められています。ナイチンゲールが伝えたことは、今、まさに適応されるべき課題でもあるのです。私は、きっとこの厳しい経験が、今後の皆さんを成長させてくれるものと信じております。
今日を出発点として、専門職の道を歩まれる皆さんに、是非お願いしておきたいことがあります。それは、より一層、自分を客観的にみる姿勢を身につけていただきたいということです。看護職としての生涯には、どのような時も、冷静で自律した自己洞察、自己管理が大切だからです。そして、できるだけ多くの人の意見に耳を傾け、社会の動きや多様な情報に触れてください。社会は大きく変わろうとしています。次々と押し寄せる正解のない様々な問題に対して、自分自身の意見を持っていただきたいと思います。自己の主張のみに固執するのは困りますが、自分の考えを大切にしながら、同時に広い視野で物事を考え続け、溢れる情報のなかでも、その質を吟味できる人になってほしいと思います。
あなたの未来は、あなた自身の中にあります。あなたが目指す看護に向かって、一歩一歩、希望と勇気をもって歩んでいってください。姫路獨協大学看護学部で仲間とともに学んだ喜びと誇りをわすれないでください。母校は、いつもあなたを支えています。
そして最後になりましたが、今の皆さんがあるのは、ご家族や周囲の人の支援があったことだと存じます。帰宅されましたら、心を込めて、皆さんが手にされた、「学位記」とともに、身近な方に感謝の思いをお伝えいただきたいと思います。
本日はご卒業おめでとうございます。心よりお喜び申し上げます。
2021年3月17日
姫路獨協大学 看護学部長 井上清美