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2013年02月06日

野嶌一郎教授 最終講義 [法学部]

 平成25年年3月31日をもって定年退職される法学部教授・野嶌一郎先生の最終講義が、先生ご担当の「歴史学II」において、1月28日(月)3限目106C教室で行われました。

 先生は、広島県呉市のご出身で、広島大学文学部、同大学院文学研究科博士課程を単位取得され、広島大学専任講師から、平成元年4月、開学間もない本学に着任、外国語学部助教授に就任されました。以来、平成の時代と同時に本学で研究・教育に邁進されて来られました。この間、一般教育部に転籍され、法学部へは平成14年に移られ、同15年に教授に昇任されました。また、平成17年から2年間、教学部長という要職にも就かれました。先生は、ホッブスを中心としたイギリス政治思想史がご専門で、法学部の専門科目・「社会史」、「政治思想」、全学共通科目の「歴史学」などを担当されました。

 今日の講義は、本学で永年ご担当されてきた「歴史学」や「社会史」、「政治思想」のまとめとした内容で、各時代の思想家に代表されるその時代の歴史観の変遷とそれら歴史観の現代的意義という長大なテーマを格調高く、そして柔らかい語り口でお話しされました。

 ルネサンス・大航海・宗教改革による世界観・人間観の広がりを取り扱った前期講義。そしてコンドルセの進歩史観、カントの目的論的普遍史、ヘルダー流のロマン主義の歴史観、ヘーゲルの観念論的歴史哲学、マルクスの唯物史観を取り上げた後期講義に共通するのは「人間」とその社会を如何に考えるか、われわれは前哲から何を学びとれるのかということについて各人が熟考することへの誘いが至る所に鏤められているところにあります。この講義においても様々な視点から物事を考えることの重要性とその難しさ、そしてそれにもかかわらず(情熱的にあるいは冷静に)この課題に取り組み続ける必要があることが学生諸氏に向けられていました。「任重くして道遠し」のメッセージは学生に伝わっていたようです。

 最終講義といえば、自身の研究成果のまとめのような内容を講演会形式で行うのが通例ですが、事前に、野嶌先生は通常の形で最終講義をされたいというご希望を出されたため、この最終講義では「歴史学II」の通常授業の最終回を行われました。真面目で、あまり仰々しいことを好まれない先生のお人柄が、最終講義にも表れていたように思います。

 講義終了後、元学長・大塚健洋教授から退職される野嶌先生に対して謝辞が述べられ、最後にゼミ生から記念の花束を贈って、最終講義を締めくくりました。
 野嶌一郎先生、本当にお疲れ様でした。

(法学部長・道谷 卓)