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2017年07月03日

【教員コラム】「ブラックに想う」

最近、「ブラック〇〇」という言葉をよく耳にします。ブラックとは、通常黒色のことですが、私たちは日常生活において、色以外の使い方をすることがあります。例えば、何もいれずにコーヒーを飲む時、ブラックと表現するように。

ところが近頃は、もっと違う使い方をする場合もあります。それが「ブラック企業」のような使い方です。「ブラック企業」とは、劣悪な環境で労働を強制する企業のことですが、「ブラックバイト」も同様です。今では「ブラック部活」という言葉までも登場しています。教育機関や職場に広がる闇の世界。喜びや希望、生きがいにあふれた場所であるはずなのに、ただただ疲弊する絶望のブラック世界があるのです。

そのブラックが、子どもの世界にまで押し寄せていることを思わせる事件が発生しました。2017年、ある認定こども園の保育実態が社会に明らかになったのです。そこで働く保育士さんの労働状況は劣悪でした。遅刻すると罰金やただ働きが科せられたり、時間外手当もなく、退職する自由すら奪われていたといいます。あろうことか子どもたちに支給される給食は、スプーン一杯ほどのおかずとわずかなご飯。成長著しい時期の子どもたちにとって、この環境は暴力的と言っていいでしょう。

この事件は私たちに大きな衝撃を与えました。しかし、果たしてこのような保育施設は稀なケースなのでしょうか。程度の差こそあれ、保育士の働く労働環境は、決して良好とは言えません。離職率の高さや、潜在保育士の多さがそれを物語っています。本来ならば、将来を担う子どもたちの成長に携わる素晴らしい仕事のはずです。この仕事につきたいと思っている人は多いはずです。しかし、保育士不足は年々深刻になっているのです。国はこの状況を何とか変えようと、様々な施策を講じていますが、効果が表れていません。早急に、保育所のブラック化を食い止めなければなりません。このことが、ひいては子どもたちの健全な成長の確保につながるのです。

このように、ブラックという言葉には暗いイメージがありますが、悪いイメージばかりではありません。黒色は、何色にも染まらないという点から「中立」のイメージを持ち、裁判官の法服やスポーツの審判などにも使用されています。また、神秘さや高級感、強さを感じさせる色でもあるのです。

黒色が好きな私は、最近のブラックのダークな使われ方が残念でなりません。ブラックがこういった使われ方をされない社会となるよう願っています。

(大塚 優子)