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2010年03月24日

経済情報学部教員によるコラム  野上 千穂准教授[経済情報学部]

在外研修を終えて
経済情報学部准教授  野上 千穂
「ドイツ会計制度」を研究テーマとしている私は、2008年9月から1年間、ドイツに留学しました。昨今話題の「国際会計基準/国際財務報告基準」の適用において、現行の会計制度に対していかなる改革が必要か、この点でドイツでの議論および方法の研究は、「現代会計」の本質を捉える上で非常に重要といわれています。そこで、研修先として、ドイツの2大学を選定しました。前半はFrankfurtからRE(地域快速)で北へ1時間程の小さな町Marburg(マールブルク)のPhilipps-Universität Marburg(マールブルク大学)、後半の半年間はHamburgからREで1時間半ほどいったところにあるSchleswig-Holstein州の州都Kiel(キール)のChristian-Albrechts-Universität zu Kiel(キール大学)で、「現代会計」の本質を修得しました。
 月並みな表現ですが、この1年は本当に貴重な経験の連続で、研究以外にも多くのことを学びました。一例として、印象に残ったエピソードを挙げることにします。それは、ドイツ人の誕生日の祝い方です。
 ある日、研究室でメールをチェックしたところ、同じ研究室の院生から1通メールが届いていました。それは、近々誕生日を迎えるAさんからで、「○月○日10時から○○研究室で朝食会を行います。是非参加ください。」という招待状でした。私は何か特別に準備しなければならないと思い、同じ研究室のBさんに相談しました。が、Bさんは「何もする必要はない。」と言うのです。不審に思いつつ当日、約束の時間に朝食会の開かれる研究室に行くと、Aさんによる朝食会の用意が見事に整えられていました。そこには、たくさんのパン、マーガリン、数種のジャム、ハムとチーズ、コーヒー、紅茶、ジュース、牛乳、果物、さらにAさんお手製のケーキ3種・・・。これらはすべてAさん自らが準備したもので、豪華な朝食を取りながら、同じ研究者同士で2時間ほど談笑するのです。勿論、会の最後には誕生会らしく、招待を受けた側からプレゼントとカードを贈ります。しかし、誕生日を迎える側がこんな会を開くことにちょっとした驚きを覚えると同時に、すっかり忘れていた幼い頃の懐かしい記憶が甦ってきたのです。いつの頃からか自分の誕生日を家族や友人に祝ってもらう、つまり受動的に迎えることが多くなりましたが、幼少の頃、誕生日には友人を招待し自らが誕生日を祝い(能動的)、さらに周りの人たちからも祝ってもらっていた(受動的)ことを。
 勿論、誕生日の祝い方の変化(能動的→受動的)が、日本において普通に生じているものなのか、一個人的なものなのかは分かりません。しかし、少なくともドイツでは、年齢に関係なく自分の誕生日を主体的に祝い楽しみます。ドイツにおけるこうした誕生日の祝い方が、なぜかとても印象に残ったのです。