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2014年01月17日

播磨学II (第13回) 開催(報告)[教務課・地域連携課]

1月10日(金)、作家で文芸雑誌『播火』編集長の柳谷郁子氏を講師にお迎えし、「播磨文学地帯――播磨の文人・作家たち」というテーマでお話しいただきました。講演要旨は以下の通りです。

播磨は古来、肥沃な土地に恵まれ、交通の要所で、流された罪人たちによって都から文化が流入した土地柄である。にもかかわらず、以前は「文化不毛の地」などと言われ、信州出身の私はいつも驚いていた。

播磨は多くの文人・作家を輩出してきた。姫路からは、主知的文学論を掲げて文壇に旋風を巻き起こした阿部知二、直木賞を受賞した車谷長吉、歌人の井上通泰や初井しず枝、歴史学者の三上参次や辻善之助、『鷺城新聞』を発行した高橋鷺城らが出た。

龍野からは、北原白秋と並んで「白露時代」を築いた三木露風、「ああ玉杯に花受けて」の矢野勘治、哲学者の三木清、女子教育者の富井於菟らが出ている。そのほか、仁豊野からは哲学者の和辻哲郎、書写からは作家の椎名麟三、飾磨からは詩人の有本芳水が出た。芳水と露風は投稿仲間であった。

福崎からは『遠野物語』を著した民俗学者の柳田國男や、短歌の岸上大作が出た。大正皇后は、柳田5兄弟の長男・鼎、井上通泰、柳田國男、海軍大佐の松岡静雄、日本画家の松岡映丘を、素晴らしい兄弟と称賛した。長年にわたって兄弟を陰で支えてきた鼎は、それを聞いて号泣したという。昔は個人主義の現在と違って、兄弟や地域で人材を育てたものである。

宮本百合子『播州平野』など、播磨を描いた文学作品も数多くあるが、私の一番のお勧めは相生出身の佐多稲子の『素足の娘』である。ぜひ一読してもらいたい。

(文責:大塚健洋)