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2015年06月29日

鉄過剰状態と老化の関連、献血など鉄除去の効果について講演[薬学部]

 6月20日(土)大倉山合志会学術講演会において、本学薬学部西郷教授が表記の講演を行いました。
 活性酸素種は、脂質や核酸を酸化させ機能異常を引き起こすと同時に、老化の引金になります。過酸化脂肪酸が、マクロファージという貪食細胞に貪食されることが動脈硬化の始まりになることはよく知られた事実です。
 この活性酸素種は、細胞内のエネルギー産生機構であるミトコンドリアから漏れ出てくる他に、好中球などの白血球の過剰な活性化、メタボリック症候群、喫煙など様々な機構で常に産生されています。さらに、体の中に鉄が余分にあると、Fenton反応という化学反応などを介して、大量の強力な活性酸素種が産生されることも知られています。即ち酸化ストレスを強く受け、老化、発癌、脳の変性疾患、動脈硬化などが進展する可能性が高い訳です。一般的に、酸化ストレス対策として、野菜などの抗酸化物質をしっかり摂取すること、運動を続けることなどが推奨されています。抗酸化物質は、余分な活性酸素種をつぶしてくれるし、運動は生体内の抗酸化機構(スーパーオキサイドディスミューテースなど)の増強に繋がります。
 さらに別な方法はないのでしょうか?それが献血であることが確かです。献血を沢山しているヒトの方が、血管のしなやかさが良好であること、心筋梗塞のリスクを減らすこと、インスリンの感受性が良好で糖の代謝に良好な効果を示すこと、そして癌死亡を減少させること、などが数多く報告されています。
赤血球の中には、ヘモグロビンという酸素を運搬する蛋白質が詰められています。そしてこのヘモグロビンが酸素を運搬できる理由は、ヘモグロビンの中に鉄があるからなのです。献血で赤血球を減少させると、その分、体の中の鉄を減らすことができ、酸化ストレス減少させることに繋がります。つまり献血は、大切な社会貢献であると同時に、赤血球献血は生体内の鉄を減少させ、酸化ストレスを減少させることになるので、「献血は自分のため」、であるとも言えます。
 さらに今回の講演では、私たちの研究室で検討している鉄キレート剤、デフェラシロックス(商品名 エクジェイド)が、好中球の過剰な活性化を抑制し、活性酸素種の産生を減少させること、さらに好中球の細胞外トラップ現象(核内の物質を細胞の外に放出して、血管の内皮細胞などを障害する他、血栓を引き起こす)を抑制させることなどを紹介しました。